「科学がすべてではない。しかし科学は非常に美しい」

- 1904年4月22日~1967年2月18日
- アメリカ合衆国出身
- 理論物理学者、科学行政官、教育者
- マンハッタン計画において原子爆弾の開発を主導し、「原爆の父」と呼ばれる。戦後は核兵器の規制と倫理的責任を訴え、冷戦下の科学と政治の関係に深い影響を与えた。
英文
“Science is not everything, but science is very beautiful.”
日本語訳
「科学がすべてではない。しかし科学は非常に美しい」
解説
この言葉は、科学の価値を絶対視することなく、それでもなお深く賞賛するオッペンハイマーの哲学的姿勢を示している。彼は科学を万能とみなしていたわけではなく、人間の感情、倫理、芸術、政治といった要素もまた人生に不可欠であると理解していた。そのうえで、科学の持つ構造の精緻さ、法則性の美、思考の明晰さに対して、強い敬意と愛情を抱いていたことがこの言葉から読み取れる。
「科学がすべてではない」という部分は、科学的知識だけでは世界の全体像を把握できないという限界の認識である。核兵器の開発とその使用を目の当たりにしたオッペンハイマーは、科学がもたらす力の大きさと、それをどう使うかの倫理的判断とのあいだに深い断絶があることを痛感していた。それでもなお彼が「科学は美しい」と語るのは、真理に近づこうとする人間の知的営みそのものに価値を見出していたからである。
この言葉は現代の我々にも重要な示唆を与える。科学は道具であり、その美しさはその使われ方とは別に存在する。だからこそ、その美を保ち続けるには、倫理と人間性の支えが必要である。オッペンハイマーのこの一節は、知と美、力と責任をどう調和させるかを考える上での出発点となるのである。
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