「ウルグアイにおけるファシズムは、1973年の軍事クーデターから始まったのではなく、憲法と議会を備えた政府がまだ存在していた何年も前から始まっていた」

- 1935年5月20日~2025年5月13日
- ウルグアイ出身
- 第40代ウルグアイ大統領、政治家、元ゲリラ闘士
英文
“Fascism in Uruguay did not begin just with the military coup of 1973, but years before, even when there was still a government with a constitution and parliament.”
日本語訳
「ウルグアイにおけるファシズムは、1973年の軍事クーデターから始まったのではなく、憲法と議会を備えた政府がまだ存在していた何年も前から始まっていた」
解説
この言葉は、ホセ・ムヒカが独裁や抑圧の本質を鋭く見抜いていたことを示している。彼は、ファシズムとは単に軍事政権や憲法停止という目に見える形で突然現れるものではなく、制度が形式上存続していても、その内実が徐々に腐敗し、抑圧的になっていく過程にこそ本質があると指摘している。つまり、権威主義の萌芽は目に見えぬかたちで進行するという歴史的警告である。
ムヒカ自身、1960年代から政府による弾圧を経験し、最終的には13年にわたって投獄されるという過酷な体験をしている。彼にとってファシズムとは、単なる政治体制の転換ではなく、言論の抑圧や政治的自由の侵害、社会的不公正が制度の中に染み込んでいくことであった。この言葉は、民主制度の「外形」だけではなく、その「中身」を守ることの重要性を訴えている。
現代社会においても、形式的な民主主義が保たれつつも、権力の集中や市民の自由が徐々に制限される事例は少なくない。この名言は、そうした現象に対し、「まだクーデターは起きていない」「法律は存在している」という理由で安心するのではなく、自由と正義の実質的な維持に常に注意を払うべきであるという、普遍的で切実な警鐘なのである。
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