「自然は人類を二人の主権者、すなわち苦痛と快楽の支配下に置いた。我々が何をなすべきか、また実際に何をなすことになるのかを決定するのは、この二つだけである」

ジェレミ・ベンサムの名言・格言・警句(画像はイメージです)
ジェレミ・ベンサムの名言・格言・警句(画像はイメージです)
  • 1748年2月15日~1832年6月6日(84歳没)
  • イギリス出身
  • 哲学者、法学者、社会改革者

英文

”Nature has placed mankind under the governance of two sovereign masters, pain and pleasure. It is for them alone to point out what we ought to do, as well as to determine what we shall do.”

日本語訳

「自然は人類を二人の主権者、すなわち苦痛と快楽の支配下に置いた。我々が何をなすべきか、また実際に何をなすことになるのかを決定するのは、この二つだけである」

解説

この言葉は、功利主義の出発点をなす最も有名なベンサムの命題のひとつである。彼は人間の行動を導く根本的原理を、苦痛と快楽という二つの感覚に求めた。すべての道徳・法律・制度は、人間が苦痛を避け、快楽を追求するという自然の法則の上に築かれていると考えたのである。つまり、行為の価値はその行為がもたらす快楽と苦痛のバランスによって測られるとされた。

この思想は、18世紀の啓蒙時代の合理主義的思潮を背景に生まれた。当時、政治や法律は伝統や権威に基づくことが多かったが、ベンサムは科学的かつ計算可能な基準を倫理や統治に持ち込もうとした。快楽と苦痛を数量化し、社会全体の幸福を最大化することを目的とする功利主義は、その後の法制度や倫理学に大きな影響を与えた。

現代社会においても、この原理は依然として重要である。例えば、医療や公共政策の判断では、施策が人々にどれだけの利益(快楽)と負担(苦痛)をもたらすかを評価基準とすることが多い。また、個人の行動や意思決定においても、私たちは無意識に苦痛を避け快楽を求める傾向に従っている。ベンサムの言葉は、人間の行動原理を根源的に捉えた普遍的な洞察として、今日もなお生き続けている。

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