「寛大さとは、所有したいという狂気に他ならない。私が手放すもの、与えるものは、与えることでより高次の形で楽しむことができる。与えることとは、与える対象を所有的に楽しむことだ」
- 1905年6月21日~1980年4月15日
- フランス出身
- 哲学者、小説家、劇作家
- 実存主義を提唱し、『存在と無』や『嘔吐』を通じて20世紀思想に大きな影響を与えた
英文
“Generosity is nothing else than a craze to possess. All which I abandon, all which I give, I enjoy in a higher manner through the fact that I give it away. To give is to enjoy possessively the object which one gives.”
日本語訳
「寛大さとは、所有したいという狂気に他ならない。私が手放すもの、与えるものは、与えることでより高次の形で楽しむことができる。与えることとは、与える対象を所有的に楽しむことだ」
解説
この名言は、サルトルが寛大さと所有欲の微妙な関係について述べたものである。彼は、寛大さが単なる利他行動や自己犠牲ではなく、実際には与えることを通じて対象への所有欲や満足感を得る行為でもあると指摘している。与えることで、対象を手放すように見えても、実はその行為自体によって一種の「高次の所有」を感じることができるという視点が込められている。サルトルは、人間の「与える行為」もまた自己の満足を満たす手段になり得ると考え、利他主義と自己愛の共存を示唆している。
また、この言葉は、利他行為の内に潜む自己満足についても触れている。寛大さや与える行為は、しばしば無償の行動として理解されるが、サルトルはその中に自己充足や自己の喜びが含まれる可能性を示している。与えること自体が持つ満足感や、自分が他者に影響を与えているという喜びは、与える者にとって一種の「所有感」をもたらす。この見解は、利他的な行動が必ずしも純粋な無私ではなく、他者を介した自己の存在意義や喜びの追求であるとするサルトルの洞察を反映している。
さらに、この名言は、自己認識と利他行動の複雑な関係を考えさせるものである。サルトルの言葉は、寛大さや利他性が単なる美徳ではなく、自己の存在価値や欲望と深く結びついていることを示唆している。彼は、自己の利他行為に潜む所有欲や満足感を認識することで、自己と他者の関係をより深く理解することができると考えており、寛大さの中にある人間的な欲望や感情の複雑さを描き出している。
感想はコメント欄へ
この名言に触れて、あなたの感想や名言に関する話などを是非コメント欄に書いてみませんか?