「多数派の利益が政治的な正邪の基準であるという現行の格言ほど、誤用されやすく、したがってより明確化を必要とするものはないと私は思う」

- 1751年3月16日~1836年6月28日(85歳没)
- アメリカ合衆国出身
- 政治家、第4代アメリカ合衆国大統領、「合衆国憲法の父」
英文
”There is no maxim, in my opinion, which is more liable to be misapplied, and which, therefore, more needs elucidation, than the current one, that the interest of the majority is the political standard of right and wrong.”
日本語訳
「多数派の利益が政治的な正邪の基準であるという現行の格言ほど、誤用されやすく、したがってより明確化を必要とするものはないと私は思う」
解説
この言葉は、多数派支配の原理が誤用される危険性を強調している。ジェームズ・マディソンは、多数派の意思をそのまま政治的正義の基準とするのは危険であり、しばしば少数派の権利侵害につながると警告した。多数派の利益は常に公共の正義と一致するわけではなく、「多数派の専制」こそ共和国における最大の脅威であると考えたのである。
背景として、マディソンは『フェデラリスト・ペーパーズ』において派閥(factions)の問題を詳しく論じた。人間社会において利害の対立は避けられず、多数派がその力を利用して少数派を圧迫する危険は常に存在する。そのため、憲法は権力分立や大規模共和国という制度的仕組みによって、多数派の暴走を抑制するよう設計された。
現代においても、この警句は有効である。民主主義が多数決を基本とする一方で、憲法や人権保障によって少数派の権利が守られているのは、まさにマディソンの洞察に基づく。彼の言葉は、民主主義の健全性は多数派の意思と少数派の権利の調和にかかっているという普遍的な真理を示しているのである。
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