「自分自身の目にも他人の目にも没落していくと知っている人間と向き合うことほど恐ろしいことはほとんどない。その人間を救うことはできない。その人に残されたものは、人間の注意から逃げ去ることだけだ」

- 1924年8月2日~1987年12月1日(63歳没)
- アメリカ合衆国出身
- 作家、評論家、公民権運動家
英文
”There are few things more dreadful than dealing with a man who knows he is going under, in his own eyes, and in the eyes of others. Nothing can help that man. What is left of that man flees from what is left of human attention.”
日本語訳
「自分自身の目にも他人の目にも没落していくと知っている人間と向き合うことほど恐ろしいことはほとんどない。その人間を救うことはできない。その人に残されたものは、人間の注意から逃げ去ることだけだ」
解説
この言葉は、自己崩壊に直面する人間の絶望を描き出している。自分が破滅へ向かっていると本人が自覚し、さらに他人からもそのように見られる状況に陥ったとき、人は支えを受け入れる力すら失ってしまう。その結果、残されたものは孤立と逃避であり、人間的関係からの断絶である。
ボールドウィンは、こうした洞察を社会的文脈と個人的経験の双方から得ていた。20世紀半ばのアメリカ社会では、人種差別や貧困の中で自らの価値を見失い、社会からも見放された人々が数多く存在した。彼は彼らの苦しみを文学に描くことで、この絶望の構造を告発したのである。
現代においても、この言葉は重い意味を持つ。社会的孤立や精神的な崩壊は今も人々を蝕んでおり、支援が届かない状況に陥ることは珍しくない。自己崩壊を自覚し、他者からも認識されるとき、人は最も深い孤独に沈むというこの警句は、社会的弱者や精神的に追い詰められた人々に向き合う責任を私たちに問いかけている。
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