「作家の欲望は驚くべきものだ。彼はすべてを、そしてほとんどあらゆる人を求めているように見えるが、同時に誰も必要としていない」

ジェイムズ・ボールドウィン(画像はイメージです)
ジェイムズ・ボールドウィン(画像はイメージです)
  • 1924年8月2日~1987年12月1日(63歳没)
  • アメリカ合衆国出身
  • 作家、評論家、公民権運動家

英文

”The writer’s greed is appalling. He wants, or seems to want, everything and practically everybody, in another sense, and at the same time, he needs no one at all.”

日本語訳

「作家の欲望は驚くべきものだ。彼はすべてを、そしてほとんどあらゆる人を求めているように見えるが、同時に誰も必要としていない」

解説

この言葉は、作家という存在の矛盾した欲望を鋭く捉えている。作家は世界中の経験や人間関係を貪欲に吸収しようとするが、その一方で創作の根源においては孤独であり、誰も必要としないという逆説的な姿勢を持つ。ボールドウィンは、この二面性を「驚くべき欲望」と表現しているのである。

時代背景を考えると、ボールドウィン自身が20世紀アメリカ文学界で直面した葛藤が透けて見える。彼は人種問題や社会的不正義を題材としながらも、同時に作家としての独立性を保とうとした。社会への関与と個としての孤立という緊張関係は、彼自身の人生と作品を大きく規定していた。

現代においても、この洞察は普遍的である。芸術家や作家はインターネットを通じて無数のつながりを持ちながらも、最終的な創造行為は孤独の中で行われる。すべてを欲しながら、誰も必要としないという逆説は、創造に携わる人々が抱える宿命であり、同時にその創造力の源泉であるといえる。

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