「人々が憎しみにこれほど頑なにしがみつく理由の一つは、憎しみが消え去ったとき、痛みに向き合わざるを得なくなると感じているからだと思う」

- 1924年8月2日~1987年12月1日(63歳没)
- アメリカ合衆国出身
- 作家、評論家、公民権運動家
英文
”I imagine one of the reasons people cling to their hates so stubbornly is because they sense, once hate is gone, they will be forced to deal with pain.”
日本語訳
「人々が憎しみにこれほど頑なにしがみつく理由の一つは、憎しみが消え去ったとき、痛みに向き合わざるを得なくなると感じているからだと思う」
解説
この言葉は、憎しみの裏に隠された痛みという心理の構造を鋭く指摘している。人は傷つけられた経験や喪失の苦しみを抱えるとき、その痛みに直面するよりも、外部へと向けられる憎しみに逃げ込む。憎しみは自己防衛であると同時に、痛みから目を逸らす手段でもあるのである。
ボールドウィンが生きた社会状況を考えると、この洞察は人種差別の現実に直結している。差別する側も差別される側も、憎しみによって複雑な感情を覆い隠していた。差別者は自らの恐怖や不安を直視しないために憎しみを選び、差別される側は屈辱や喪失感を乗り越えるために同じ感情を抱くこともある。憎しみは痛みの代替物として社会に根を下ろすのである。
現代においても、この言葉は深い意味を持つ。対立や分断が強まる社会で、憎しみに固執する人々はしばしば自らの傷を認めることを恐れている。憎しみを手放すことは、避けてきた痛みに向き合う勇気を持つことを意味する。その勇気がなければ、憎しみは永遠に続く鎖となるのである。
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