「医師が善をなせないときには、害をなすことから遠ざけられねばならない」

- 紀元前460年頃~紀元前370年頃
- 古代ギリシャ出身
- 医師、医学教師、哲学者
- 「医学の父」と称され、病気を自然現象として理解しようとした最初期の人物の一人。ヒポクラテスの誓いは医療倫理の基盤として今日まで受け継がれている。観察と記録に基づく診断を重視し、近代医学の礎を築いた。
英文
“Whenever a doctor cannot do good, he must be kept from doing harm.”
日本語訳
「医師が善をなせないときには、害をなすことから遠ざけられねばならない」
解説
この言葉は、医療における最も基本的かつ厳粛な倫理原則を端的に表している。すなわち、「善をなすこと(beneficence)」が叶わぬときには、少なくとも「害をなさぬこと(non-maleficence)」を守るべきだという教訓である。これは現代医療でも頻繁に引用されるヒポクラテスの誓いに通じる概念であり、無益な治療や有害な介入を回避することが医師の責務であることを明言している。
古代ギリシャでは、医学的知見が限定されていたがゆえに、過剰な治療や誤った判断による害が現実に存在していた。ヒポクラテスはその中で、知識の限界を認める謙虚さと、治療の中止や控えを選択する判断力の重要性を説いた。これは、治すこと以上に、傷つけないという倫理的態度が重視されるべきであるという、深い人間理解に基づく姿勢である。
現代においても、延命治療の是非や過剰医療の問題が議論されており、医師が「何もしない」選択をする勇気と判断力が必要とされる場面がある。たとえば、回復の見込みがない患者への侵襲的処置や、科学的根拠に乏しい治療法の押し付けは、善意であっても害となることがある。この言葉は、医療者が持つべき慎重さと倫理観の中核をなす金言として、現代にも重く響いている。
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