「たとえ具体的な詩として残っていなくても、ひらめきの瞬間は失われてはいない。それらの体験は消えない印象を残し、私たちは折に触れてそれを思い出すのだ」
- 1817年7月12日～1862年5月6日
- アメリカ合衆国出身
- 作家、思想家、詩人、超越主義哲学者、自然と個人主義の擁護者
英文
“Our moments of inspiration are not lost though we have no particular poem to show for them; for those experiences have left an indelible impression, and we are ever and anon reminded of them.”
日本語訳
「たとえ具体的な詩として残っていなくても、ひらめきの瞬間は失われてはいない。それらの体験は消えない印象を残し、私たちは折に触れてそれを思い出すのだ」
解説
この名言は、創造的なひらめきや感動が形にならなくとも、心に深い痕跡を残すことの価値を語っている。ソローは、芸術や思想が必ずしも具体的な作品という形で表されなくても、その本質は失われないと考えていた。つまり、創作の「結果」よりも、内面に生じた「経験そのもの」の方に重きを置いている。
この姿勢は、ソローの自然との交感や精神的探求にも通じる。彼は日々の生活の中で、多くの観察や思索を行っていたが、それらが必ずしも詩や随筆の形で記録されたわけではない。しかし、その過程で得られた感性の変容や精神の成長は確かに存在し、それが後の表現や思想に影響を及ぼしている。インスピレーションは単なる創作の源ではなく、人格そのものを形作る力でもあるという理解である。
現代においてもこの言葉は示唆的である。多くの人が創作や成果を残せなかった経験を「無駄だった」と感じることがあるが、実際にはその瞬間の感動や直感が心の奥に沈殿し、別のかたちで未来に影響を与える。たとえば、かつての読書や旅の記憶が、思わぬ場面で判断や創造の源となるように、感受したすべては確かに自分の一部となって生き続けている。この名言は、そうした見えない蓄積の尊さを静かに肯定している。
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