「自然は天才に満ち、神性にあふれている。ひとひらの雪片ですら、その形作る手から逃れることはない」

• 1817年7月12日～1862年5月6日
• アメリカ合衆国出身
• 作家、思想家、詩人、超越主義哲学者、自然と個人主義の擁護者

英文

“Nature is full of genius, full of the divinity; so that not a snowflake escapes its fashioning hand.”

日本語訳

「自然は天才に満ち、神性にあふれている。ひとひらの雪片ですら、その形作る手から逃れることはない」

解説

この言葉は、自然そのものに内在する創造性と神聖さへの深い敬意を示している。ソローは、自然界の最も小さな存在――ここでは雪のひとひら――にさえ、知性と意志が宿っていると考えていた。「genius（天才）」と「divinity（神性）」という語を用いることで、自然の構造や秩序が偶然や混沌ではなく、意図された美と調和によって成り立っているという直観が語られている。

この思想は、ソローの自然観の核心に位置する。彼は『ウォールデン』を通して、人間の理性を超えた自然の働きの中に、哲学的真理や霊的啓示を見出した。雪片という微細で儚い存在を例に挙げることで、自然の創造性はスケールの大小を問わず、常に完全であり、計り知れないことを表現している。

現代においても、科学が自然の精密さを明らかにする一方で、その背後にある「なぜこれほどまでに美しく秩序立っているのか」という問いは依然として残る。ソローのこの名言は、自然の中に宿る知性と神秘を再認識し、謙虚さと畏敬をもって自然に接するべきだという哲学的態度を促している。人間中心の視点を超えて、宇宙全体の一部として自然の神聖さに身を委ねることの大切さが、この言葉には込められているのである。

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