「安らぎを得るために障害と戦うが、いざ手に入れてみると、その安らぎには耐えられなくなる」

ヘンリー・アダムズ(画像はイメージです)
ヘンリー・アダムズ(画像はイメージです)
  • 1838年2月16日~1918年3月27日(80歳没)
  • アメリカ合衆国出身
  • 歴史家、文筆家、政治評論家

英文

”We combat obstacles in order to get repose, and when got, the repose is insupportable.”

日本語訳

「安らぎを得るために障害と戦うが、いざ手に入れてみると、その安らぎには耐えられなくなる」

解説

この名言は、人間の本質的な不満と自己矛盾を鋭く言い表している。ヘンリー・アダムズは、私たちが困難や障害を乗り越えようとするのは、最終的に「安らぎ」や「平穏」にたどり着きたいからだと述べる。ところが、いざその安らぎを手にした瞬間、人間はそれを「耐えがたいもの」として感じ、退屈や空虚に苛まれるという逆説を提示している。

この考えは、アダムズの人生観や歴史観に深く結びついている。彼は歴史を単なる進歩や成功の積み重ねではなく、絶え間ない葛藤と運動によって駆動される過程と見ていた。人間も同様に、目的を達成してしまうと、それまでの緊張や意欲を失い、むしろ「何もないこと」に苦しむという、動的存在としての性質を持つ。これは、ストア派的な静寂とも、近代的な効率主義とも異なる、人間の精神的構造への深い洞察である。

現代においても、目標を達成した後の「燃え尽き症候群」や、成功後の空虚感といった現象はよく知られている。この名言は、人間が本質的に「安定」を求めつつも、そこに永遠にとどまることができない動的存在であることを教えてくれる。アダムズは、生きることの意味が「達成」ではなく、その過程にこそあるという逆説的な真理を、端的に言い表している。

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