「ワシントン大統領からグラント大統領に至る進化の過程だけで、ダーウィンの理論は覆されかねない」

- 1838年2月16日~1918年3月27日(80歳没)
- アメリカ合衆国出身
- 歴史家、文筆家、政治評論家
英文
”The progress of evolution from President Washington to President Grant was alone evidence to upset Darwin.”
日本語訳
「ワシントン大統領からグラント大統領に至る進化の過程だけで、ダーウィンの理論は覆されかねない」
解説
この名言は、アメリカ大統領制と進化論への痛烈な風刺である。ヘンリー・アダムズは、建国の父ジョージ・ワシントンと、南北戦争後の第18代大統領ユリシーズ・S・グラントの比較を通して、時代を経ても指導者の質が「進化」しているとは言い難いことを皮肉っている。ダーウィンの進化論が「時間とともにより高度で適応的な存在へと発展する」という前提に立つなら、アメリカ政治の現実はそれと逆行しているのではないかという逆説が、この一文には込められている。
アダムズは、ワシントンを道徳的威厳とリーダーシップの象徴として尊敬していた一方、グラント政権下の腐敗・無能・政治的堕落に深く幻滅していた。その失望感を、ダーウィンという科学的権威を引き合いに出して皮肉ることで、政治的退廃の深刻さと文明批評としての鋭さがより際立っている。
この名言は、現代にも通じる。指導者の劣化、制度の形式化、理念の空洞化が進む中で、「本当に社会は進化しているのか?」という疑問は普遍的である。アダムズの言葉は、進歩の名のもとに退歩していく政治の現実に対する知的抵抗であり、歴史を皮肉と洞察によって捉える知識人の目線を鋭く示している。
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