「靴が合うかどうかを知るのに靴職人である必要はなく、普遍的な関心事について知識を得るのに専門家である必要も同様にない」

- 1770年8月27日~1831年11月14日
- ドイツ出身
- 哲学者、観念論の体系化者、弁証法と歴史哲学の提唱者
英文
“We do not need to be shoemakers to know if our shoes fit, and just as little have we any need to be professionals to acquire knowledge of matters of universal interest.”
日本語訳
「靴が合うかどうかを知るのに靴職人である必要はなく、普遍的な関心事について知識を得るのに専門家である必要も同様にない」
解説
この言葉は、知識や判断は専門的地位にある者だけに許されるものではないという、ヘーゲルの知識観と公共性への信頼を示すものである。靴の履き心地は自分で判断できるように、人間に関する普遍的な事柄—倫理、政治、教育など—に関しても、誰もが理性と経験によって理解しうるという立場である。ここでは、理性を持つすべての人間が思考と判断の主体であるという啓蒙主義的精神が表れている。
ヘーゲルの思想では、専門知や学問の権威を否定するわけではない。しかし、知識の正当性や判断の妥当性は、一般理性によっても確認されるべきであり、専門家のみに独占されるべきではないという立場をとる。特に国家や社会に関わる「普遍的関心事」に関しては、市民一人ひとりが熟慮し参加すべきであり、それが自由と倫理の実現につながると考えた。
現代社会においても、科学や経済、政治などの領域で専門家の声が重視される一方、市民の理解と参加が民主主義の健全な運営に不可欠であることが広く認識されている。たとえば、気候変動や公共政策についての議論において、一般市民が自らの判断を持つことは無意味ではなく、むしろ制度と自由の土台となる。ヘーゲルのこの言葉は、理性を持つ主体としての市民の尊厳を力強く肯定している。
感想はコメント欄へ
この名言に触れて、あなたの感想や名言に関する話などを是非コメント欄に書いてみませんか?