「この世の本当の悲劇とは、正と誤の対立ではなく、二つの正の対立である」

- 1770年8月27日~1831年11月14日
- ドイツ出身
- 哲学者、観念論の体系化者、弁証法と歴史哲学の提唱者
英文
“Genuine tragedies in the world are not conflicts between right and wrong. They are conflicts between two rights.”
日本語訳
「この世の本当の悲劇とは、正と誤の対立ではなく、二つの正の対立である」
解説
この言葉は、道徳や正義の対立が単純な善悪の構図では説明できないことを示している。ヘーゲルは、人間社会における多くの悲劇は、それぞれに正当性を持つ価値や立場の衝突から生じると考えた。たとえば、家庭の義務と国家の義務の衝突、あるいは自由と秩序の対立といった、どちらも倫理的正当性を有する場合である。
この考え方は、古代ギリシア悲劇に典型的に見られる。たとえば『アンティゴネー』においては、国家の法を守るべきというクレオンの立場と、家族の義を貫くアンティゴネーの行動が、共に「正」として描かれる。ヘーゲルはこうした悲劇において、一方が完全に悪で他方が完全に善であるという図式ではない点に、真の悲劇性を見出した。
現代社会にも応用可能な視点であり、宗教対立や文化的衝突、自由と安全保障のバランスなど、正当な価値観がぶつかり合う場面において、このヘーゲルの洞察は有効である。解決の難しさは、いずれかを単に否定することができないところにある。このような状況では、妥協や対話を通じた新たな合意形成が不可欠となる。
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