「我々がヴェソンティオの近くで数日間、穀物やその他の補給を整えていたとき、兵士たちの問いかけや、ガリア人や商人たちの話がきっかけで恐慌が広がった。彼らは、ゲルマン人が屈強な体格を持ち、信じがたい勇猛さと武術の技に秀でていると語ったのだ」

- 紀元前100年7月12日頃~紀元前44年3月15日
- ローマ共和国出身
- 軍人、政治家、作家、独裁官
- ガリア戦争での勝利により軍事的名声を得て、ローマ内戦を制して終身独裁官に就任。共和政を終焉へと導く政治改革を推進しつつも、元老院派により暗殺された。ローマ帝政への転換点を築いた古代史上最も影響力のある人物の一人として知られている。
英文
“During a few days’ halt near Vesontio for the provision of corn and other supplies, a panic arose from inquiries made by our troops and remarks uttered by Gauls and traders, who affirmed that the Germans were men of a mighty frame and an incredible valour and skill at arms.”
日本語訳
「我々がヴェソンティオの近くで数日間、穀物やその他の補給を整えていたとき、兵士たちの問いかけや、ガリア人や商人たちの話がきっかけで恐慌が広がった。彼らは、ゲルマン人が屈強な体格を持ち、信じがたい勇猛さと武術の技に秀でていると語ったのだ」
解説
この一節は、カエサルの『ガリア戦記』における実戦直前の兵士たちの心理状態と、それを揺るがす風聞の力を如実に示している。ヴェソンティオ(現在のフランス・ブザンソン)近郊にて補給のための短い停滞期間に、兵士たちは敵であるゲルマン人の恐ろしさをガリア人や商人から聞かされ、不安に駆られた。ここでは、情報(真偽不明を問わず)が軍の士気に与える決定的影響が描かれている。
カエサルはこのような心理的動揺を把握したうえで、演説や冷静な指導によって軍の統制を回復しようと努めた。彼にとって「恐怖を制すること」は、戦の勝利と同じくらい重要であった。軍事的な準備だけでなく、精神的な備えと情報の管理がいかに重要であるかという実践的な教訓がここには含まれている。
この名言は、現代の組織運営や危機管理にも通じる。デマや噂によって組織が混乱するのを防ぐためには、冷静な判断と迅速な情報対応が必要である。特に戦時や非常時には、事実以上に「 perception(印象)」が人々を動かす力を持つ。この記述は、カエサルの軍司令官としての才覚と、群集心理への深い洞察を物語るものである。
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