「ワーグナーは本当に人間なのだろうか?むしろ病気ではないだろうか?彼が触れるものすべてを汚染し、音楽を病ませてしまった」
- 1844年10月15日~1900年8月25日
- ドイツ出身
- 思想家、哲学者、詩人、古典文献学者
- 『ツァラトゥストラはこう語った』『善悪の彼岸』『道徳の系譜』などの著作で、従来の道徳や宗教、真理に疑問を投げかけ、現代哲学に多大な影響を与えた
英文
”Is Wagner a human being at all? Is he not rather a disease? He contaminates everything he touches – he has made music sick.”
日本語訳
「ワーグナーは本当に人間なのだろうか?むしろ病気ではないだろうか?彼が触れるものすべてを汚染し、音楽を病ませてしまった」
解説
ニーチェは、リヒャルト・ワーグナーに対して厳しい批判を述べ、彼の音楽やその影響力が、音楽の純粋さや本質を損なうものであると考えている。ニーチェはかつてワーグナーの熱烈な支持者であったが、のちにその音楽が過度に情緒的でドラマチックであり、人間の弱さや退廃的な面を強調しているとして失望するようになった。この引用では、ワーグナーが音楽に持ち込んだ要素が音楽の「健康」を損ない、過剰な感情やドラマによって音楽の崇高さや純粋さを「病ませて」しまったというニーチェの見解が表現されている。
ニーチェが「病気」という比喩を用いてワーグナーを批判する背景には、音楽が人間の精神や感情に与える影響の重要性がある。たとえば、音楽は人々にインスピレーションを与え、高揚感や深い感情を引き起こす力を持つが、過度に情緒的で刺激的な音楽は、真の美や価値を見失わせ、心を乱す可能性がある。ニーチェは、ワーグナーの音楽が持つ「病的」な要素が、音楽そのものの健康を害していると考えたのである。彼にとって、音楽は人間をより高い次元へと導くべきものであり、過剰な情緒性は音楽の純粋な価値を歪めてしまうと捉えた。
ニーチェのこの言葉は、芸術が過度に感情に訴えかけると、本来の価値を損なう危険性があることを示している。音楽や芸術は、人間の精神を高揚させ、崇高な美や価値を表現する手段であるべきと考えたニーチェにとって、ワーグナーの音楽が引き起こす感情の過剰な刺激や劇的な表現は、芸術の純粋さを歪める「病」であった。ニーチェは、芸術が健全であるためには、過度の情緒表現に頼らず、精神的な深みや美の本質を重視すべきだと考えている。
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