「人は死そのものを恐れているのではなく、死に至る瞬間だけを恐れているのだと私は信じている」
- 1561年1月22日~1626年4月9日
- イングランド出身
- 哲学者、神学者、法学者、政治家、貴族
- 近代科学の基礎を築く「帰納法」を提唱し、またイギリス経験主義の祖として後世に影響を与えた
英文
“I do not believe that any man fears to be dead, but only the stroke of death.”
日本語訳
「人は死そのものを恐れているのではなく、死に至る瞬間だけを恐れているのだと私は信じている」
解説
フランシス・ベーコンのこの言葉は、人間が「死そのもの」よりも「死に至る過程や痛み」を恐れるのではないかという考えを示している。彼は、人間が意識を失った後の状態、つまり「死」が本質的に恐ろしいものだとは考えず、むしろ死に至る瞬間の苦痛や恐怖に対する不安の方が強いと述べている。この視点は、人間が「無」そのものを恐れるのではなく、苦痛や未知の体験に対して恐怖を抱く心理を鋭く捉えている。
この言葉は、人間の死に対する感情の複雑さを浮き彫りにしている。死後の状態は人間にとって想像が及ばないため、実際には「何もない」かもしれない。それにもかかわらず、死に至るまでの苦しみや、肉体が無力になる瞬間への恐怖が強く感じられるのである。たとえば、多くの人が老いや病による苦痛や、突然の事故での死を恐れるが、死そのものがもたらす「無」についての恐怖はあまり感じないことが多い。死を恐れるのではなく、死に行く過程が恐れの対象となっていることが理解できる。
現代においても、このベーコンの洞察は有効である。医療の進歩により人々の寿命が延びた一方で、死を迎える際の苦痛や不安に対する恐れが増している。特に、終末医療や安楽死の問題が議論される中で、死の「瞬間」をどう迎えるかがより注目されている。人々が望むのは、できるだけ穏やかで苦痛の少ない形で死を迎えることであり、そこに安心を見出すのだ。
ベーコンの言葉は、死を自然なものと捉え、過度に恐れるのではなく、それを理解し受け入れる心構えを教えている。死を避けることはできなくても、恐怖や不安を和らげるための準備や心構えを持つことで、死に至る瞬間に対する恐れを減らし、穏やかにその時を迎えることができるだろう。
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