「アメリカ合衆国においてさえ、アフリカ系の人々の奴隷化はエイブラハム・リンカーンの大統領時代まで続いていた。その残酷な形の奴隷制度が廃止されたのは、キューバよりわずか三十年ほど早かったにすぎない」
- 1926年8月13日～2016年11月25日
- キューバ出身
- 革命家、政治家、弁護士
英文
“Even in the United States, the enslavement of African descendants continued until the presidency of Abraham Lincoln. That brutal form of slavery was abolished there hardly thirty years before it was abolished in Cuba.”
日本語訳
「アメリカ合衆国においてさえ、アフリカ系の人々の奴隷化はエイブラハム・リンカーンの大統領時代まで続いていた。その残酷な形の奴隷制度が廃止されたのは、キューバよりわずか三十年ほど早かったにすぎない」
解説
この言葉は、奴隷制度の歴史における普遍的な残虐性と、その廃止の遅れに対する批判を含んでいる。フィデル・カストロはしばしば、アメリカの人権状況を批判する際に、歴史的な文脈を引き合いに出すことがあった。ここでは、自由と民主主義を掲げるアメリカにおいてすら、アフリカ系住民に対する非人道的な扱いが長く続いたことを強調している。
キューバでは奴隷制度が1886年に廃止されたが、アメリカでは1865年の南北戦争終結とともに公式に廃止された。つまり、両国の間には三十年も差がないという事実をもって、アメリカが道徳的に優れていたわけではないという主張がなされている。また、カストロの語り口には、帝国主義的な価値観への反発や、グローバル南の立場からの視点も込められている。
この名言は、現代の人種問題や歴史教育に対しても通じる含意を持つ。どの国にも暗い過去があるという認識は、他国批判の前提として謙虚さを求めるとともに、自国の歴史に正面から向き合う姿勢を促す。カストロのこの発言は、歴史の相対性と政治的利用の巧みさを物語っている。
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