「一方で、量子物理学の形而上学的な解釈、すなわち言葉による解釈は、はるかに不確かな基盤の上にある。実際、この四十年以上にわたり、物理学者たちは明確な形而上学的モデルを示すことができていない」

エルヴィン・シュレーディンガー(画像はイメージです)
エルヴィン・シュレーディンガー(画像はイメージです)
  • 1887年8月12日~1961年1月4日(73歳没)
  • オーストリア出身
  • 理論物理学者

英文

”The verbal interpretation, on the other hand, i.e. the metaphysics of quantum physics, is on far less solid ground. In fact, in more than forty years physicists have not been able to provide a clear metaphysical model.”

日本語訳

「一方で、量子物理学の形而上学的な解釈、すなわち言葉による解釈は、はるかに不確かな基盤の上にある。実際、この四十年以上にわたり、物理学者たちは明確な形而上学的モデルを示すことができていない」

解説

この言葉はシュレーディンガーが量子力学の解釈問題に触れたものとされる。量子力学は数式としての予測力において極めて成功しているが、その現象を哲学的にどう理解するか、つまり「現実はどうなっているのか」という問いには確固たる答えが存在しない。シュレーディンガーはここで、量子論の数学的構造の強固さと、言語的・形而上学的解釈の脆弱さを対比させている。

時代背景として、この発言がなされた20世紀半ばまでに、コペンハーゲン解釈、波動力学、隠れた変数理論など多様なアプローチが議論されてきた。しかし、いずれも完全な説明を提供するには至らず、「数学は正しいが世界観は曖昧」という状況が続いた。シュレーディンガー自身も猫の思考実験を通じて、この解釈の曖昧さを鋭く批判していた。

現代においてもこの問題は未解決である。多世界解釈や量子情報理論の進展があるものの、依然として量子現象の本質を説明する形而上学的モデルは確立していない。この言葉は、科学が実用的に成功しても哲学的基盤は揺らぎ続けるという事実を示し、科学と哲学の対話の必要性を改めて強調しているのである。

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