「姉妹というものは壊れやすいものです。神は私に対してけちだったので、私は神に対して用心深くなりました。一人というのは繊細な全体です。一羽の鳥、一つのかご、一度の飛翔──信仰によってしかまだ知られていない、あの遠い森の中の一つの歌です」

- 1830年12月10日~1886年5月15日(55歳没)
- アメリカ合衆国出身
- 詩人
英文
”Sisters are brittle things. God was penurious with me, which makes me shrewd with Him. One is a dainty sum! One bird, one cage, one flight; one song in those far woods, as yet suspected by faith only!”
日本語訳
「姉妹というものは壊れやすいものです。神は私に対してけちだったので、私は神に対して用心深くなりました。一人というのは繊細な全体です。一羽の鳥、一つのかご、一度の飛翔──信仰によってしかまだ知られていない、あの遠い森の中の一つの歌です」
解説
この言葉は、孤独、信仰、自己と神との関係性、そして存在の儚さを織り交ぜた、ディキンソンらしい深い省察に満ちている。「Sisters are brittle things(姉妹は壊れやすいもの)」という一文は、人間関係の脆さと失われるものへの痛みを象徴し、続く「God was penurious with me(神は私に対してけちだった)」では、人生における欠落感や、与えられなかったものへの皮肉と失望が表現されている。
しかし「which makes me shrewd with Him(だから私は神に対して抜け目なくなった)」という言葉からは、その痛みを受け入れたうえでの冷静な態度、ある種の信仰との駆け引きのような姿勢も感じ取れる。「One is a dainty sum(一人は繊細な全体)」という言葉には、個としての人間のかけがえのなさと、孤独の中に潜む完全性が見出される。
最後の「one bird, one cage, one flight; one song in those far woods…(一羽の鳥、一つのかご、一度の飛翔、あの遠い森の中の一つの歌)」という描写は、魂の自由、死後の世界、またはまだ見ぬ神秘的な啓示を暗示している。これらはすべて「faith only(信仰によってのみ)」で認識されるという点で、宗教や霊性への距離感を保ちながらも、それを完全に否定しないディキンソンの姿勢が浮かび上がる。
この一節は、喪失や孤独を抱える者にとっての慰めであり、信仰と理知の間に揺れる人間の真実を静かに照らしているのである。
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