「もし名声が私のものであったなら、私は彼女から逃れることはできなかったでしょう。もしそうでなければ、一日中追いかけても名声には届かず、ついには犬の承認さえも私から離れてしまうでしょう。私は裸足の身分のほうがましです」

- 1830年12月10日~1886年5月15日(55歳没)
- アメリカ合衆国出身
- 詩人
英文
”If fame belonged to me, I could not escape her; if she did not, the longest day would pass me on the chase, and the approbation of my dog would forsake me then. My barefoot rank is better.”
日本語訳
「もし名声が私のものであったなら、私は彼女から逃れることはできなかったでしょう。もしそうでなければ、一日中追いかけても名声には届かず、ついには犬の承認さえも私から離れてしまうでしょう。私は裸足の身分のほうがましです」
解説
この言葉は、名声への ambivalence(愛憎入り混じった態度)と、それに代わる静かな誇りを詩的に語っている。エミリー・ディキンソンは生前ほとんど無名であり、世俗的な評価から距離を置いて生きた詩人であるが、この一節では名声に翻弄される可能性と、それを追い求める虚しさをユーモアと皮肉を込めて描いている。
「If fame belonged to me(名声が私のものであったなら)」という仮定には、名声が一度つけば人はそれから逃れられず、その重みに縛られるという皮肉が含まれている。一方、「the longest day would pass me on the chase(長い一日をかけても追いつけない)」という部分は、名声を追い求める徒労と焦燥を示しており、ついには「**the approbation of my dog(犬の承認)さえも失う」ほど、自分自身さえ信じられなくなるという境地が描かれている。
そのうえで語られる「My barefoot rank is better(裸足の身分のほうがまし)」という結びは、飾らず、無位無冠のまま、自分らしくいることの自由と誇りを強く肯定している。現代でも、名声や承認欲求に揺れる社会の中で、虚飾を脱ぎ捨てた「裸足の生き方」こそが本質的な価値を持つ**というこの詩のメッセージは、静かに、しかし深く胸に迫るものである。
感想はコメント欄へ
この名言に触れて、あなたの感想や名言に関する話などを是非コメント欄に書いてみませんか?