「神は私たちほど用心深くはありません。さもなければ、私たちが神を忘れてしまわないように、友人など与えなかったでしょう!茂みにある天国の魅力は、時に、手の中にある天国によって打ち消されてしまうように思えてなりません」

- 1830年12月10日~1886年5月15日(55歳没)
- アメリカ合衆国出身
- 詩人
英文
”God is not so wary as we, else He would give us no friends, lest we forget Him! The charms of the heaven in the bush are superseded, I fear, by the heaven in the hand, occasionally.”
日本語訳
「神は私たちほど用心深くはありません。さもなければ、私たちが神を忘れてしまわないように、友人など与えなかったでしょう!茂みにある天国の魅力は、時に、手の中にある天国によって打ち消されてしまうように思えてなりません」
解説
この言葉は、人間の愛情と信仰とのあいだに生まれる葛藤や、神よりも身近な喜びに心を奪われがちな人間の弱さを、皮肉と嘆きの入り混じった口調で語っている。エミリー・ディキンソンは神への信仰を持ちながらも、その信仰が人間関係や現実の幸福によって揺らぐことの危うさを敏感に捉えていた。
「God is not so wary as we(神は私たちほど用心深くない)」という冒頭の一節は、人間が神を忘れてしまうことへの皮肉な指摘であり、「lest we forget Him(私たちが神を忘れてしまわないように)」という言葉には、友人という慰めが時に信仰の代わりとなることへの複雑な感情が込められている。
また、「the heaven in the bush(茂みにある天国)」はまだ手に入っていない理想や信仰の象徴であり、「the heaven in the hand(手の中にある天国)」は現実的で感覚的な満足や愛情を意味している。ここでは、理想への信仰が、現実の慰めによって時に忘れられてしまうという、人間の本質的な性を示している。
この名言は、現代においても信仰と現実のはざまで揺れる人間の矛盾を鋭く突いている。ディキンソンはこの一文で、神の愛よりも近くにある「誰か」の優しさが、私たちにとって時に天国のすべてになってしまうという、深く人間的な真実を語っているのである。
感想はコメント欄へ
この名言に触れて、あなたの感想や名言に関する話などを是非コメント欄に書いてみませんか?