「“~せねばならぬ”だと? それは君主に向かって使うべき言葉か? 小さな男よ、小さな男よ! お前の父が生きていたとしても、その言葉を私に使う勇気などなかっただろう」

エリザベス1世の名言・格言・警句(画像はイメージです)
  • 1533年9月7日~1603年3月24日
  • イングランド出身
  • イングランド女王

英文

“Must! Is must a word to be addressed to princes? Little man, little man! Thy father, if he had been alive, durst not have used that word.”

日本語訳

「“~せねばならぬ”だと? それは君主に向かって使うべき言葉か? 小さな男よ、小さな男よ! お前の父が生きていたとしても、その言葉を私に使う勇気などなかっただろう」

解説

この言葉は、君主に対して命令口調を使うことの不敬を厳しく戒めた、エリザベス1世の激しい反発の表現である。彼女はここで、「must(~しなければならない)」という命令的な語が、自身のような王に向かって使われることを断じて認めず、君主の権威と判断を侵す言葉であると捉えている。さらに「little man(小さな男)」という繰り返しの蔑称には、軽率に権力に挑んだ者への冷笑と威圧が込められている。

この発言は、1602年頃、エセックス伯ロバート・デヴルーの傲慢な態度に女王が激怒して放った言葉として伝えられている。エリザベス1世は女性でありながら、自らの統治権をいささかも軽んじられることを許さず、「王とは命令される存在ではなく、決断する存在である」という厳格な自負をこの一言に込めた。王の威厳を守るための断固たる姿勢と、過去の敬意を持ち出して相手を諫める政治的な巧妙さがここに見える。

現代においてもこの名言は、敬意ある言葉の選び方の重要性や、権威への接し方に関する教訓を示している。特に、上位者や責任を担う立場の者に対して、命令や強制ではなく、敬意をもって対話する姿勢の大切さを説いている。また、歴史や先人との比較によって立場を省みる視点も、今なお重要なコミュニケーションの要素として読み取ることができる。

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