「完全な安全を求めるのなら、刑務所に行けばいい。そこでは食事も与えられ、衣服も支給され、医療も受けられる。唯一欠けているもの──それは自由だ」

- アメリカ合衆国出身
- 軍人、政治家、第34代アメリカ合衆国大統領
- 第二次世界大戦中に連合国軍の最高司令官としてヨーロッパ戦線を指揮し、ノルマンディー上陸作戦を成功に導いた。大統領としては冷戦下の安定と経済成長を推進し、州間高速道路網の建設や公民権運動初期への対応でも知られている。
英文
“If you want total security, go to prison. There you’re fed, clothed, given medical care and so on. The only thing lacking… is freedom.”
日本語訳
「完全な安全を求めるのなら、刑務所に行けばいい。そこでは食事も与えられ、衣服も支給され、医療も受けられる。唯一欠けているもの──それは自由だ」
解説
この名言は、安全と自由の本質的な緊張関係を鋭く突いた警句である。アイゼンハワーは、国家の安全保障と個人の自由とのバランスが常に課題となることを深く理解しており、「完全な安全」を追求するあまり、自由を犠牲にする社会への警告としてこの言葉を残している。安全は確かに重要だが、そのためにすべてを国家に委ねてしまえば、自由な市民社会は成立しないという逆説を示している。
刑務所というたとえは極端に見えるが、それこそがこの名言の力である。生活が全面的に管理され、物理的な保障が整っていても、そこに自由がなければ人間としての尊厳は成り立たないという事実を、非常に明快かつ皮肉な形で表現している。アイゼンハワーは、冷戦期の全体主義や監視社会の兆候を憂慮しており、自由を代償に手に入れた安全は、真の幸福や人間性から最も遠い場所にあるということを訴えているのである。
この名言は、現代の社会においてもなお重要な意義を持つ。テロ対策や感染症対策、治安維持などを名目に、監視や統制が強化される中で、私たちは何を守り、何を失っているのかを問い直さねばならない。自由な社会は、時に不完全な安全を許容することによって成立している──この言葉は、自由を愛する者たちへの静かで鋭い警告であり、政治と倫理の境界を常に意識するための原点となる。
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