「家庭の幸福は諸悪の本」

- 1909年6月19日~1948年6月13日(38歳没)
- 日本出身
- 小説家
原文
「家庭の幸福は諸悪の本」
解説
この言葉は、太宰治が家庭という閉じた幸福が、かえって社会全体に悪影響を及ぼす源泉となるという逆説的な思想を示したものである。人は家庭の安定や幸福を守ろうとするあまり、他者への無関心や排他性を強め、時に不正や偽善に目をつぶる。太宰は、その狭い幸福への執着が「諸悪の本」となることを鋭く指摘したのである。
当時の昭和社会は家父長的な家制度が強固であり、家庭の存続を優先するあまり、個人の自由や人間性が犠牲にされる場面が多かった。太宰自身も家庭への憧れと幻滅の間で揺れ動き、その矛盾を痛烈に表現した。家庭は愛と安らぎをもたらす一方で、しばしば束縛や腐敗の温床ともなりうるという両義性を、彼は冷徹に見抜いていた。
現代においても、この言葉は大きな意味を持つ。家庭の幸福を求めることは自然な願いであるが、それを絶対視すると社会的不正や排他的態度を正当化してしまう危険がある。例えば、自分の家族の利益だけを守ろうとする行動が、他者への搾取や差別につながることもある。太宰のこの言葉は、家庭という小さな幸福と、社会全体の倫理との緊張関係を突きつける鋭い警句である。
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