「万年若衆は、役者の世界である。文学には無い」

- 1909年6月19日~1948年6月13日(38歳没)
- 日本出身
- 小説家
原文
「万年若衆は、役者の世界である。文学には無い」
解説
この言葉は、太宰治が若さを永遠に保つ存在は舞台の虚構にすぎず、文学には存在しないと断じたものだ。「万年若衆」とは歌舞伎などで、年を取っても若々しい役柄を演じ続ける役者を指す。しかし、太宰は文学においてはそうした仮構は通用せず、人間は老い、変化し、堕ちていく現実をそのまま描かねばならないと主張している。
昭和初期の文学界では、作家に「永遠の青春」や「純粋さ」が期待されることも多かった。しかし太宰は、文学は役者のように虚飾で若さを演じる場ではなく、人間の老いと衰え、現実の重みを描く場所であると考えていた。そこには、自身の破滅的な生き方をも隠さず作品に反映させた太宰の文学観が色濃く表れている。
現代においても、この言葉は示唆的である。芸能やメディアの世界では若さが商品化されるが、文学や思想においては、年齢や衰えを含めた人間の全体を誠実に描くことが価値となる。太宰のこの言葉は、文学の真実性と役者の虚構性を対比させ、人間の生の重みを受け止める文学の本質を鮮やかに示しているのである。
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