「太陽が明日昇らないという命題は、太陽が昇るという断言と同じくらい理解可能であり、それ以上の矛盾を含むものではない」

デイヴィッド・ヒューム(画像はイメージです)
デイヴィッド・ヒューム(画像はイメージです)
  • 1711年5月7日~1776年8月25日(65歳没)
  • スコットランド出身
  • 哲学者、歴史家、経済学者、「経験論と懐疑主義の代表的思想家」

英文

”That the sun will not rise tomorrow is no less intelligible a proposition, and implies no more contradiction, than the affirmation, that it will rise.”

日本語訳

「太陽が明日昇らないという命題は、太陽が昇るという断言と同じくらい理解可能であり、それ以上の矛盾を含むものではない」

解説

この言葉は、ヒュームの因果関係と経験的知識に関する懐疑論を端的に示すものである。彼は、我々が未来について抱く確信は理性による必然的な認識ではなく、過去の経験に基づく慣習にすぎないと論じた。したがって、太陽が昇ると信じることも、昇らないと仮定することも、論理的な矛盾を含まず、理性の観点からは同等に可能な命題である。

18世紀の啓蒙思想の中で、科学は自然法則の確実性を前提に発展していた。しかしヒュームは、自然の法則を理性で絶対的に証明することはできないと指摘した。人間は過去の反復経験によって未来を予測するが、それは論理的必然性ではなく心理的習慣に基づくものである。この洞察は後にカントを刺激し、近代哲学の大きな転換点となった。

現代においても、この言葉は科学哲学や認識論に深い影響を与えている。自然の規則性を信じることは実践的には不可欠だが、理性の枠組みだけで保証できるものではない。したがってこの言葉は、我々の知識の限界を認識しつつ、経験と習慣に支えられて世界を理解しているという重要な真理を教えているのである。

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