「もし自然があまりに強力でなければ、哲学は我々を完全なピュロン主義者にしてしまうだろう」

- 1711年5月7日~1776年8月25日(65歳没)
- スコットランド出身
- 哲学者、歴史家、経済学者、「経験論と懐疑主義の代表的思想家」
英文
”Philosophy would render us entirely Pyrrhonian, were not nature too strong for it.”
日本語訳
「もし自然があまりに強力でなければ、哲学は我々を完全なピュロン主義者にしてしまうだろう」
解説
この言葉は、ヒュームの懐疑論と人間の自然的傾向の対立を示している。ピュロン主義とは古代ギリシャの懐疑主義であり、いかなる知識も確実ではないとする立場である。哲学的に徹底すれば、人間は何事も信じられなくなるはずだが、ヒュームによれば自然的本能や習慣の力があまりに強く、完全な懐疑主義に陥ることはできないのである。
18世紀の啓蒙思想は理性を重視したが、ヒュームは人間の理性には限界があると考えた。彼の経験論は懐疑主義を深めつつも、最終的には人間が自然の習慣によって信念を形成せざるを得ない存在であると結論づけた。この点で彼は、理性を絶対視する立場と懐疑主義の両方に批判的であった。
現代においても、この洞察は鋭い。科学的懐疑や哲学的懐疑がどれほど進んでも、人間は本能的に因果を信じ、日常生活を営む。つまりこの言葉は、理性や懐疑を突き詰めても、最終的には人間の自然がそれを制限し、信念を回復させることを示しているのである。
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