「人は愉快な情念によってよりも、むしろ悲哀の情念によってはるかに頻繁に跪かされる」

デイヴィッド・ヒューム(画像はイメージです)
デイヴィッド・ヒューム(画像はイメージです)
  • 1711年5月7日~1776年8月25日(65歳没)
  • スコットランド出身
  • 哲学者、歴史家、経済学者、「経験論と懐疑主義の代表的思想家」

英文

”Men are much oftener thrown on their knees by the melancholy than by the agreeable passions.”

日本語訳

「人は愉快な情念によってよりも、むしろ悲哀の情念によってはるかに頻繁に跪かされる」

解説

この言葉は、ヒュームの宗教と人間感情の関係に対する洞察を示している。彼は、人間が宗教的行為に駆り立てられるのは喜びよりも悲しみや恐怖といった否定的情念による場合が多いと述べている。つまり、人は苦難や不安に直面したときにこそ、祈りや信仰に身を委ねやすいという現実的な観察である。

18世紀の啓蒙思想は、宗教を理性や自然法則の観点から再解釈しようとしていた。しかしヒュームは宗教の起源を、人間の感情の動きに根ざした現象と捉えた。特に悲哀や恐怖は強力で、人間を超越的存在に依存させやすい。これは宗教を心理的・社会的な文脈で理解しようとする、経験論的な宗教批判の一端である。

現代においても、この洞察は妥当する。人々は幸福なときよりも、不安や苦境にあるときに信仰や宗教的実践に頼る傾向が強い。したがってこの言葉は、人間の宗教性が理性ではなく感情、特に悲哀に根ざしていることを明らかにし、信仰を理解するうえでの重要な視点を提供しているのである。

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