「世界全体の破壊を、自分の指のひっかき傷よりも好むことは、理性に反するものではない」

デイヴィッド・ヒューム(画像はイメージです)
デイヴィッド・ヒューム(画像はイメージです)
  • 1711年5月7日~1776年8月25日(65歳没)
  • スコットランド出身
  • 哲学者、歴史家、経済学者、「経験論と懐疑主義の代表的思想家」

英文

”It is not contrary to reason to prefer the destruction of the whole world to the scratching of my finger.”

日本語訳

「世界全体の破壊を、自分の指のひっかき傷よりも好むことは、理性に反するものではない」

解説

この言葉は、ヒュームの理性と情念の関係に関する議論の一端である。彼は理性を「手段を見極める力」と捉え、人間の目的や欲望を決定するのは理性ではなく情念であると考えた。したがって、理性は行動の方向性を規定せず、どんな欲望や選択も理性そのものに反するとは言えない。理性は道具であり、目的を与えるものではないという立場が、この過激な例えで表現されている。

18世紀の啓蒙時代には、理性が人間の行動を導く最高の原理とされがちであった。しかしヒュームはこの考えに挑戦し、理性は感情や欲望に従属すると主張した。この言葉は、その急進的な懐疑論を端的に示すものであり、当時の哲学的議論に大きな影響を与えた。

現代においても、この考え方は倫理や心理学に通じる。例えば、人が小さな痛みを避けるために大きな損害を受け入れることは直観的には不合理に見えるが、ヒュームによればそれは感情や価値観の優先順位によって決まるため、理性が否定できるものではない。つまりこの言葉は、人間行動の根底にあるのは理性ではなく感情であることを強調しているのである。

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