「天国と地獄は、人間を善人と悪人という二つの異なる種に分けることを前提にしている。しかし人類の大部分は、悪徳と美徳のあいだを漂っている」

デイヴィッド・ヒューム(画像はイメージです)
デイヴィッド・ヒューム(画像はイメージです)
  • 1711年5月7日~1776年8月25日(65歳没)
  • スコットランド出身
  • 哲学者、歴史家、経済学者、「経験論と懐疑主義の代表的思想家」

英文

”Heaven and hell suppose two distinct species of men, the good and the bad. But the greatest part of mankind float betwixt vice and virtue.”

日本語訳

「天国と地獄は、人間を善人と悪人という二つの異なる種に分けることを前提にしている。しかし人類の大部分は、悪徳と美徳のあいだを漂っている」

解説

この言葉は、ヒュームの人間観と道徳観を端的に示している。宗教は人間を単純に善と悪に分け、天国や地獄といった明確な報いを想定する。しかしヒュームは、実際の人間の大多数はそのどちらか一方に明確に属するのではなく、善と悪のあいだを行き来する曖昧な存在であると指摘している。

18世紀の啓蒙時代は、宗教的道徳から理性的・世俗的な道徳へと移行する時期であった。ヒュームは人間の道徳性を情念や共感に基づくものとして理解し、道徳を単純な二分法ではなく連続的なスペクトルとして捉えた。この見解は、宗教的世界観への懐疑と同時に、人間本性の現実的な理解を反映している。

現代においても、この洞察は示唆に富む。社会は善悪の単純な区別で成り立っているのではなく、多くの人は利己心と善意のあいだで揺れ動く。したがってこの言葉は、人間を一面的に裁くのではなく、その複雑さを理解する姿勢の重要性を我々に教えているのである。

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