「しかし、私たちが問題を解決するために用いるものが、問題の源になっているように見える。それは医者に行って病気を治してもらうどころか、逆に病気にされるようなものだ。実際、医療の20%の症例ではそのようなことが起きているようである。しかし思考の場合は、その割合は20%をはるかに超えている」

デヴィッド・ボーム(画像はイメージです)
  • 1917年12月20日~1992年10月27日(74歳没)
  • アメリカ合衆国出身(後にイギリスに帰化)
  • 理論物理学者、哲学者

英文

”Yet it looks as if the thing we use to solve our problems with is the source of our problems. It’s like going to the doctor and having him make you ill. In fact, in 20% of medical cases we do apparently have that going on. But in the case of thought, its far over 20%.”

日本語訳

「しかし、私たちが問題を解決するために用いるものが、問題の源になっているように見える。それは医者に行って病気を治してもらうどころか、逆に病気にされるようなものだ。実際、医療の20%の症例ではそのようなことが起きているようである。しかし思考の場合は、その割合は20%をはるかに超えている」

解説

この言葉は、人間の思考が解決の道具であると同時に問題の根源となり得る逆説を鋭く指摘している。デヴィッド・ボームは、思考が本来は秩序をもたらすべきものでありながら、同じ思考の枠組みが新たな問題を生み出す構造を重視した。そのため「医者に行って病気にされる」という比喩を用いて、思考の自己矛盾を直感的に説明している。

歴史的に見ても、この現象は顕著である。経済危機の多くは、短期的に有効と思われた金融手法や政策が長期的には不均衡や崩壊を招いた例である。また政治においても、秩序維持のための権力強化がかえって社会的不安を増幅させることがある。問題解決のための思考が、無自覚に問題を拡大するというのは、普遍的な人間の弱点である。

現代社会においては、この指摘は一層重要である。テクノロジーの発展もまた便利さを提供する一方で、監視や依存の問題を深刻化させている。ボームの言葉は、思考の作用を絶対視せず、その限界を見極める必要性を警告している。解決を求めて思考に頼るだけでは、かえって問題を悪化させることを忘れてはならないのである。

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