「世の名声とは風の息にすぎぬ。それは今はこの方角に、やがてはあの方角へと吹き、向きを変えれば名もまた変わる」

- 1265年頃~1321年9月14日
- イタリア(フィレンツェ共和国)出身
- 詩人、哲学者、政治家
- 叙事詩『神曲』の作者として知られ、中世ヨーロッパ文学の頂点を築いた。トスカーナ語(イタリア語)の発展にも寄与し、「イタリア語の父」とも称される。現世・煉獄・天国を旅する壮大な構想を通じて、宗教・倫理・政治の問題を詩的に表現した。
英文
“Worldly fame is but a breath of wind that blows now this way, and now that, and changes name as it changes direction.”
日本語訳
「世の名声とは風の息にすぎぬ。それは今はこの方角に、やがてはあの方角へと吹き、向きを変えれば名もまた変わる」
解説
この言葉は、『神曲』煉獄篇第11歌において、名声の儚さと不確かさを批判する文脈で語られる。ダンテはこの場面で、名誉や世評に執着することの無意味さを、風という変わりやすく頼りない自然現象になぞらえている。名声は人間の記憶に依存しており、その記憶は時間とともに薄れ、曲げられ、忘れ去られるという認識が根底にある。
中世キリスト教思想においては、永遠の救いに比べて地上の栄光は取るに足らぬものとされていた。この名言もその思想に立脚しており、不変の真理に目を向けず、一時の名声や虚栄に心を奪われる愚かさを戒めている。風が向きを変えるたびに名も変わるという比喩は、世間の評価がいかに不安定で信頼できないかを強く印象づける。
現代においても、SNSやメディアの発達により、人々の名声や評判は瞬時に築かれ、同様に一瞬で崩れる。この言葉は、名声に価値を置く生き方の危うさと、内面の真実の方がはるかに重要であるという教訓を伝える。風に翻弄される名声より、揺るぎない倫理や信念こそが人間の真価を決定すると、ダンテは詩を通して力強く語っている。
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