「我らの人生の旅路の半ばにおいて、私は正しき道を見失い、暗い森の中に己を見出した」

- 1265年頃~1321年9月14日
- イタリア(フィレンツェ共和国)出身
- 詩人、哲学者、政治家
- 叙事詩『神曲』の作者として知られ、中世ヨーロッパ文学の頂点を築いた。トスカーナ語(イタリア語)の発展にも寄与し、「イタリア語の父」とも称される。現世・煉獄・天国を旅する壮大な構想を通じて、宗教・倫理・政治の問題を詩的に表現した。
英文
“In the middle of the journey of our life I came to myself within a dark wood where the straight way was lost.”
日本語訳
「我らの人生の旅路の半ばにおいて、私は正しき道を見失い、暗い森の中に己を見出した」
解説
この一節は、『神曲』地獄篇第1歌の冒頭であり、ダンテの全詩篇の出発点となる極めて重要な一文である。「我らの人生の旅路の半ばにおいて」という言葉は、作者が35歳、すなわち人生の折り返し地点に立っていたという中世的人生観に基づいている。ここから、自己の内省と霊的再生を描く壮大な旅が始まる。
「暗い森」とは、罪や混乱、霊的な迷妄の象徴であり、ダンテが現実世界での誤った道を歩んできたことを意味する。また、「正しき道を見失う」ことは、倫理的・宗教的方向感覚の喪失を表す。この詩的な迷いは、中世における神の秩序からの逸脱と、それに対する目覚めと回帰の物語の始まりである。
現代においても、「人生の中途に暗い森に迷い込む」という感覚は多くの人が共有するものである。精神的な危機や喪失感、人生の転機における混乱を経験することは、人間の普遍的な体験である。この名言は、そのような危機から目を背けるのではなく、直視し、内なる旅を始めよという呼びかけであり、時代を越えて読む者に深い共感と覚悟を促す詩的宣言である。
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