「本来の意味での奴隷制とは、一人の人間に対し、他人の生命と財産を完全に支配する権利を与える制度のことである」

- 1689年1月18日~1755年2月10日
- フランス王国出身
- 哲学者、法学者、政治思想家
- 『法の精神』において三権分立を提唱し、近代憲法や民主主義理論に大きな影響を与えた。啓蒙時代を代表する思想家として、自由と法の支配の重要性を説いた。
英文
“Slavery, properly so called, is the establishment of a right which gives to one man such a power over another as renders him absolute master of his life and fortune.”
日本語訳
「本来の意味での奴隷制とは、一人の人間に対し、他人の生命と財産を完全に支配する権利を与える制度のことである」
解説
この名言は、奴隷制の本質を制度としての「合法化された絶対的支配」であると定義している。モンテスキューは、奴隷制を単なる社会的慣行としてではなく、ある者が他者の存在そのものを支配できるという異常な権利の確立と捉えていた。人間が他の人間の「生命」と「財産」そのものを完全に掌握するという状態は、法や道徳の名において決して正当化されるべきではないという暗黙の批判が込められている。
モンテスキューは『法の精神』において、奴隷制を人間の理性と自由に対する最も深刻な冒涜と見なしていた。彼は当時の欧米に広く存在した奴隷制を、経済的・植民地主義的な構造の中で批判的に分析し、その非人道性を理性的・法的観点から浮き彫りにしようとした。「権利」という言葉を用いながら、皮肉を込めてその不正義を暴いている点に、啓蒙思想家としての彼の立場が明確に現れている。
現代においても、奴隷制は公式には否定されているが、人身売買や強制労働、権力による支配構造といった形で変容しながら存在し続けている。この名言は、法によって「正当化」された支配が、どれほど危険で人間の尊厳を損なうものかを深く理解するための警句であり、自由と平等の原則がいかに脆弱であるかを示す歴史的証言でもある。
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