「もし私の祖国にとって有益であっても、他国を破滅させるような策を知っていたとしても、私はそれを君主に進言しない。なぜなら私はまず人間であり、それからフランス人だからだ… 私が人間であることは必然だが、フランス人であることは偶然にすぎないのだから」

- 1689年1月18日~1755年2月10日
- フランス王国出身
- 哲学者、法学者、政治思想家
- 『法の精神』において三権分立を提唱し、近代憲法や民主主義理論に大きな影響を与えた。啓蒙時代を代表する思想家として、自由と法の支配の重要性を説いた。
英文
“If I knew of something that could serve my nation but would ruin another, I would not propose it to my prince, for I am first a man and only then a Frenchman… because I am necessarily a man, and only accidentally am I French.”
日本語訳
「もし私の祖国にとって有益であっても、他国を破滅させるような策を知っていたとしても、私はそれを君主に進言しない。なぜなら私はまず人間であり、それからフランス人だからだ… 私が人間であることは必然だが、フランス人であることは偶然にすぎないのだから」
解説
この名言は、愛国心と人道主義の間にある倫理的ジレンマに対して、モンテスキューが明確に人間の普遍的道徳を優先させる立場を表明した極めて重要な一節である。彼は、国家という枠組みを越えて、すべての人間に共通する道徳的義務があると考え、自国の利益を追求するために他国を犠牲にすることを良しとしなかった。ここでは、国民としての偶然の立場よりも、人間としての必然的本性に基づいた倫理判断が最優先される。
この考えは、啓蒙時代の普遍主義的な人間観と密接に結びついており、モンテスキューは『法の精神』においても、正義は国家や文化を超えて存在すべきものであり、真の法とは人間の理性と良心に根ざしたものであると説いている。この名言は、国家主義や排他的愛国心に対する明確な反論であり、倫理においては人類全体への責任が優先されるべきだという道徳的信念を表明したものである。
現代においてもこの名言は極めて示唆的である。グローバル化が進む一方でナショナリズムが再燃する中、自国の利益と人類の普遍的価値がしばしば衝突する場面において、どのような倫理的判断が求められるかという問いに対し、モンテスキューは「まず人間として考えよ」と明言する。偶然に与えられた国籍よりも、普遍的な人間性に立脚した行動こそが、真の正義と平和を築く礎となる。
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