「我々の宗教そのものが深い悲哀に満ちている――それは普遍的な苦悩の宗教であり、その普遍性ゆえに個人に完全な自由を与え、各人が自らの言葉でそれを讃えることを許す。ただし、その者が苦悩を知り、画家であるならば」

- 1821年4月9日~1867年8月31日(46歳没)
- フランス出身
- 詩人、評論家、「近代象徴詩の先駆者」
英文
”Our religion is itself profoundly sad – a religion of universal anguish, and one which, because of its very catholicity, grants full liberty to the individual and asks no better than to be celebrated in each man’s own language – so long as he knows anguish and is a painter.”
日本語訳
「我々の宗教そのものが深い悲哀に満ちている――それは普遍的な苦悩の宗教であり、その普遍性ゆえに個人に完全な自由を与え、各人が自らの言葉でそれを讃えることを許す。ただし、その者が苦悩を知り、画家であるならば」
解説
この言葉は、ボードレールが考えた芸術の宗教性を示している。彼にとって芸術は、救済や喜びではなく、むしろ普遍的な悲哀や苦悩を共有する営みであった。その「宗教」は個人に自由を与え、形式や教義を押し付けることはないが、苦悩を理解し、それを表現できる者だけがその共同体に属することができるとされている。
19世紀フランスの社会は政治的動乱と近代化の中で、従来の宗教的信仰が揺らぎつつあった。ボードレールはキリスト教の枠組みを借りながらも、芸術を新たな精神的共同体として捉えた。ここで言う「宗教」は信仰の制度ではなく、苦悩と美を媒介とする芸術的感受性の普遍性を指している。
現代においても、この視点は示唆に富む。芸術は特定の宗派や規範に従う必要はなく、むしろ個々の表現が尊重される。しかし、その根底にはしばしば人間存在の苦悩が横たわり、それを共有することで普遍性が生まれる。ボードレールの言葉は、芸術を苦悩と自由の宗教として理解する独自の美学を鮮烈に語っているのである。
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