「自然とは……自己利益の内なる声にすぎない」

- 1821年4月9日~1867年8月31日(46歳没)
- フランス出身
- 詩人、評論家、「近代象徴詩の先駆者」
英文
”Nature… is nothing but the inner voice of self-interest.”
日本語訳
「自然とは……自己利益の内なる声にすぎない」
解説
この言葉は、自然観に対する懐疑的な視点を示している。ボードレールは、しばしば理想化される「自然」を無垢で純粋なものとは見なさず、むしろ人間の欲望や利己心を投影した概念にすぎないと捉えた。つまり「自然らしさ」とは道徳的な真理ではなく、自己利益を正当化するための声にほかならないという批判である。
19世紀の思想界では、ルソーの影響もあり「自然への回帰」が美徳として語られることが多かった。だがボードレールはその潮流に反発し、自然を神聖視する態度を否定した。彼にとって自然は、美や善の源泉ではなく、欲望や自己本位の衝動を覆い隠した観念であった。この視点は彼の反俗的精神や独自の美学とも深く結びついている。
現代においても、この言葉は鋭い示唆を持つ。環境保護や「自然の理」を強調する言説の中にも、人間の利害や価値観が色濃く反映される場合がある。ボードレールの言葉は、自然という言葉に潜む人間的欲望の影を見抜き、私たちに批判的な眼差しを促しているのである。
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