「芸術家が芸術家であるのは、その洗練された美の感覚ゆえである。その感覚は酔わせるような喜びを彼に示すが、同時にあらゆる醜形や不均衡に対しても同じく鋭敏な感覚を含んでいる」

- 1821年4月9日~1867年8月31日(46歳没)
- フランス出身
- 詩人、評論家、「近代象徴詩の先駆者」
英文
”An artist is an artist only because of his exquisite sense of beauty, a sense which shows him intoxicating pleasures, but which at the same time implies and contains an equally exquisite sense of all deformities and all disproportion.”
日本語訳
「芸術家が芸術家であるのは、その洗練された美の感覚ゆえである。その感覚は酔わせるような喜びを彼に示すが、同時にあらゆる醜形や不均衡に対しても同じく鋭敏な感覚を含んでいる」
解説
この言葉は、芸術家の二重の感受性を端的に表している。芸術家は美に対して並外れた感覚を持つが、それは必然的に醜や歪みをも敏感に感じ取る力を伴う。美が鮮烈に意識されるほど、その対極である醜や不調和もまた強く感受されるのである。
19世紀フランスの象徴主義やデカダンスの芸術潮流において、ボードレールは「美と醜の共存」を繰り返し描いた。『悪の華』では、華麗な美とともに病や死、退廃が描かれ、それによって美の輝きは一層際立った。彼にとって、芸術は調和だけでなく不調和をも包含する営みであり、それこそが芸術家の本質であった。
現代においても、この洞察は普遍的である。写真や映画、美術作品において、醜悪や不均衡を描くことがかえって人間存在の真実を照らすことがある。ボードレールの言葉は、芸術家の感受性は美と醜を不可分のものとして捉えることを示し、芸術が単なる美化ではなく、現実の全体を映し出す営みであることを教えているのである。
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