清少納言の名言・格言・警句

- 966年頃~1025年頃(諸説あり)
- 日本出身
- 作家、随筆家
人物像と評価
清少納言は、平安時代中期の女流作家・歌人であり、随筆文学の古典『枕草子』の作者として知られる人物である。
藤原定子に仕え、宮廷生活を背景に自然・人事・儀式などを鋭い観察眼と感性豊かな言葉で描いた。
『枕草子』は、四季の美や人間関係を「をかし」という美意識で捉え、機知と風雅に満ちた文章で後世に大きな影響を与えた。
一方で、その感覚は貴族社会に特有であり、批評精神がしばしば辛辣であることから、好悪の分かれる人物像ともされる。
また、和歌や漢詩への造詣も深く、当時の文化水準を示す重要な証言者である。
批判を含めても、清少納言は個性と知性を武器に宮廷文化を生き抜いた女性であり、日本文学における随筆の確立者として不朽の地位を占めている。
名言
- 「秋は夕暮れがよい。夕日が差して、山の端がとても近くに見えるとき、カラスがねぐらへ帰ろうとして、三羽四羽、二羽三羽と飛び急ぐ様子までもしみじみと趣深い」
- 「めったにないもの、舅にほめられる婿。また姑にかわいがられるお嫁さん」
- 「めったにないもの……男と女のことは言うまでもないが、女同士でも、深い契りを交わして親しく語り合う人と、最後まで仲良くいられる人は少ない」
- 「アリはとてもいやなものだが、動きがとても軽やかで、水の上などをただ歩いて歩き回っている様子は、なんともおもしろい」
- 「言いにくいもの……気おくれするような立派な人からの贈り物に対するお礼の返事」
- 「かわいらしいもの……ひな人形の道具。池から取り上げた、とても小さなハスの浮き葉。とても小さなアオイの葉。何もかも、小さいものはみなかわいらしい」
- 「うらやましく思われるもの……病気で寝込んでいるときに、笑ったり話したり、何の心配もなさそうに歩き回っている人を見ると、本当にうらやましく感じられる」
- 「絵に描くと実物に比べて見劣りするもの――なでしこ、菖蒲、桜。そして、物語の中で美しいとたたえられている男や女の姿」
- 「男というものは、やはりとても不思議で理解しがたい気がすることがある。とても美しい人を捨てて、みにくいと思えるような人を妻にしているのも、不思議なことだ」
- 「男でも女でも、言葉や文字を下品に使っているのは、あらゆることの中でも特にみっともないことだ」
- 「気がかりなもの……今やって来たばかりの人の気持ちもわからないまま、大切な品物を持たせて誰かのもとにやったのに、その人がなかなか帰ってこないこと」
- 「きまりが悪くていたたまれないもの……客人と会って話をしているときに、奥の方でくだけた話などをしているのを、止めることができずに聞いているときの気持ち」
- 「きまりが悪くて見ていられないもの……思っている相手がひどく酔って、同じことを何度も繰り返している様子」
- 「きまりが悪くて見ていられないもの……かわいくもない子どもを、自分の気持ちのままにかわいがって、愛おしそうにし、その子どもがしゃべったことを声色そのままに語って聞かせること」
- 「木の花では、濃くても薄くても紅梅がよい。桜は、花びらが大きく、葉の色が濃く、細い枝に咲いているのがよい。藤の花は、房が長くしなやかで、色濃く咲いているのがとてもすばらしい」
- 「残念なもの……遊びや、あるいは見せたいものがあって、迎えにやった人が来ないこと」
- 「気の毒に思えるもの……二人の恋人を持っていて、あちらこちらと振り回されている男」
- 「気の毒に思えるもの……ひどく嫉妬深い男に強く愛されている女」
- 「気持ちよさそうなもの……池の蓮が、通り雨に打たれている様子」
- 「胸がときめくもの……髪を洗って化粧をし、香り高く染めた衣を身につけているとき。特に見てくれる人がいない場所であっても、心の中はやはりとても晴れやかで楽しい」
- 「じれったいもの……遠くにいる恋しい人からの手紙を受け取って、しっかり封じられた封を開けるときほど、なんとももどかしいものはない」
- 「過ぎ去った時が恋しく思われるもの……かつてしみじみと心を動かされた人の手紙を、雨が降って所在なく過ごす日などに探し出して読むこと」
- 「興ざめなもの……うまく詠めたと思う和歌を相手に送ったのに、返事が返ってこないこと」
- 「興ざめなもの……大きな子どもがたくさんいて、場合によっては孫がはいはいしそうな年齢の人たちが、親同士で昼寝をしていること」
- 「そもそも誰かに一番に愛されなければ、何の意味があるだろう。ただひどく、中途半端に憎まれ、悪く扱われて生きるのはいやだ。二番目や三番目なら、死んでしまってもかまわない。どうせなら、一番でありたい」
- 「説教をする僧は顔がよいほうがよい。講師の顔をじっと見つめていると、その説いている内容までもがありがたく感じられる」
- 「雑色や随身は、少し痩せて細身であるのがよい。男はやはり若いうちは、それなりに引き締まっているのがよい。あまり太っていると、眠たそうに見えてしまう」
- 「ひたすら過ぎ去っていくもの――帆をかけて走る舟。人の年齢。春、夏、秋、冬の四季」
- 「比べようもないもの……愛しく思う人と憎らしく思う人とでは。同じ人であっても、心を寄せてくれるときと、そうでないときとでは、本当に別人のように感じられる」
- 「中断されやすいもの……精進の日の勤行。遠い所への急ぎの用事」
- 「近いようで遠いもの……兄弟や親族の仲。鞍馬のつづら折りと呼ばれる道。十二月の晦日と正月元日のあいだ」
- 「月の明るさを眺めていると、さまざまなことが遠くへ思いめぐらされ、過ぎ去ったことのつらかったことも、うれしかったことも、趣深いと思ったことも、まるで今起こっているかのように思われるときがある」
- 「遠いようで近いもの――極楽。舟の通る道。人と人との関係」
- 「何気ない言葉であって、強く心に訴えかけるものではなくても、気の毒なことを『お気の毒に』とか、しみじみとしたことを『本当にどれほど思っているのだろう』などと言ったと伝え聞くのは、直接向かい合って言われるよりもうれしい」
- 「夏は夜がよい。月の出ている頃はもちろん、闇の中にたくさんのほたるが飛び交っているのもよい。また、ほんの一つ二つだけが、ほのかに光りながら行くのも趣深い」
- 「腹立たしいもの……急ぎの用事があるときにやって来て、長々と話をする客」
- 「腹立たしいもの……火桶や炭櫃の火に、手のひらを何度もひっくり返しながら、押しつけるようにしてあたっている人」
- 「腹立たしいもの……こっそりやって来た人を見つけて吠える犬」
- 「腹立たしいもの……無理をしてまで隠れて横になっている人が、いびきをかいていること」
- 「腹立たしいもの……眠くなって横になったときに、蚊がか細い声でうるさく鳴きながら、顔のあたりを飛び回ること」
- 「腹立たしいもの……人が物語を話しているときに、横から出てきて自分ひとりで最後までしゃべり続ける人」
- 「蠅はまさに憎らしいものの一つに数えるべきで、少しも愛嬌がない。人に危害を加えたり、敵とみなすほどの大きさではないが、秋などには、あらゆる物にとまり、顔などにぬれた足でとまっているのは本当にいやなものだ」
- 「きまりが悪いもの……別の人を呼んだのに、自分だといって出てくる人。物を渡そうとしているときなどは、なおさらである」
- 「きまりが悪いもの……ふとしたときに人のことを少し悪く言ってしまったのを、幼い子どもが聞き取っていて、その本人がいる前で口にしてしまうこと」
- 「きまりが悪いもの……しみじみとした話を誰かが語り出して、つい泣いたりするのを、本当に心打たれると思いながら聞いているのに、自分は涙がすぐには出てこないとき、とても気まずい」
- 「気恥ずかしいもの……恋愛を好む男の心の中」
- 「春は夜明けがよい。だんだんと空が白みはじめ、山ぎわがわずかに明るくなって、紫がかった雲が細くたなびいている様子は美しい」
- 「まずは書の手習いをなさいませ。次に琴(きん)の御琴を、人より一層上手に弾けるようになろうと思いなさい。そして、『古今和歌集』二十巻をすべて暗記なさることを、学問の中心になさるのです」
- 「人から軽んじられるもの……崩れかけた築土(ついじ)。あまりに心が優しすぎると人に知られてしまった人」
- 「人の噂話をされて腹を立てる人は、本当に理不尽だ。どうして言わずにいられようか。自分のことをさておいても、あれほど言いたくてたまらないことがあるものだろうか」
- 「冬は早朝がよい。雪が降っているのは言うまでもなく、霜が真っ白に降りているのも、また、そうでなくてもとても寒いときに、火を急いでおこし、炭を運んでくるのも、とても冬らしく趣深い」
- 「将来が遠く感じられるもの……生まれたばかりの赤ん坊が大人になるまでの年月」
- 「自分の知っている男性が、以前付き合っていた女性のことをほめて口にするのは、もう昔のこととはいえ、やはり腹立たしい」