デヴィッド・ボーム

- 1917年12月20日~1992年10月27日(74歳没)
- アメリカ合衆国出身(後にイギリスに帰化)
- 理論物理学者、哲学者
人物像と評価
デヴィッド・ボーム(David Joseph Bohm)は量子物理学において重要な貢献を果たした理論物理学者である。
彼は量子ポテンシャルを導入した「パイロット波理論」により、コペンハーゲン解釈とは異なる決定論的な視点を提示した。
また、全体性と内在的秩序を重視する「ホログラフィック・パラダイム」を提唱し、宇宙や意識を相互に絡み合う全体として理解しようとした。
これにより、物理学を超えて哲学や心理学にも大きな影響を与えたのである。
一方で、彼の理論は主流物理学界では周縁的と見なされることも多く、実験的裏付けに乏しいとの批判を受けた。
しかし、その斬新な発想は科学の枠を広げ、知の統合を志向する探究心として高く評価されている。
名言
- 「異なる視点で知覚し、考える能力は、得られた知識よりも重要である」
- 「思考は結果に抗い、不快な結果を避けようとしながらも、その思考のやり方を続けようとする。これを私は『持続的不整合』と呼ぶ」
- 「思考はそのようにして絶えず問題を生み出し、それを解決しようとする。しかし解決しようとすればするほど、自らが問題を作り出していることに気づかないため事態を悪化させ、考えれば考えるほどさらに多くの問題を生み出す」
- 「しかし今日、人々がその言葉を一般的に用いるとき、それはすべての部分が相互依存しているものを意味する。それは単に相互作用のためだけでなく、意味のためにも、存在のためにもである」
- 「このような全体的な思考のあり方は、新しい理論的発想の豊かな源となるだけでなく、人間の心が全体的に調和して機能するために必要であり、それはひいては秩序正しく安定した社会を可能にする助けとなり得る」
- 「企業はシステムとして組織されている――この部署やあの部署があり、それぞれは単独では意味を持たず、共に機能してはじめて成り立つ。同様に身体もシステムである。社会もある意味でシステムである。そしてそのように続いていく」
- 「しかし、私たちが問題を解決するために用いるものが、問題の源になっているように見える。それは医者に行って病気を治してもらうどころか、逆に病気にされるようなものだ。実際、医療の20%の症例ではそのようなことが起きているようである。しかし思考の場合は、その割合は20%をはるかに超えている」
- 「それゆえ人類に何が起こるのかを考えざるを得なくなる。技術は善にも破壊にも用いられ得る、ますます大きな力を持って進歩し続けている」
- 「これが思考のもう一つの大きな特徴である。思考は自分が何かをしていることを知らず、それに抗おうとする。そして自分がそれをしていることを知りたがらない」
- 「思考は自ら分断を作り出し、それを自然に存在するものだと言う」
- 「しかし情報をどう扱うかを決めているのは自分ではない。思考が自分を動かしているのである。思考はあたかも自分がそれを動かし、制御しているかのような誤った情報を与える。しかし実際には思考こそが私たち一人ひとりを支配している」
- 「相対性理論において運動は連続的で、因果的に決定され、明確に定義されているが、量子力学においては不連続であり、因果的に決定されず、明確にも定義されていない」
- 「このようにして新しい種類の心が生まれ始める。それは対話の過程で絶えず変化し続ける共通の意味の発展に基づいている」
- 「もし私たちが、自分の見解を押し付けたり他者に迎合したりする強迫的な衝動もなく、また歪曲や自己欺瞞もなく、自由に意味を共有できるとしたら。それは文化における真の革命を成すのではないか」
- 「思考は絶えず進化してきており、その体系がいつ始まったのかを私たちは言うことができない」
- 「しかし、この世界的な結びつきの体系にもかかわらず、まさに今この瞬間、あらゆる場所でかつてない規模でコミュニケーションが崩壊しているという一般的な感覚が存在している」
- 「私たちは思考を一つのプロセスとしてあまり注目してこなかった。思考に従事してはきたが、注目してきたのはその内容であって、プロセスそのものではなかった」
- 「さらに問うべきは、思考と現実との関係である。注意深く観察すれば、思考それ自体が実際の運動の過程にあることが分かる」
- 「このすべての問題の源は何か。その源は基本的に思考にあると私は言う。このような主張は狂気じみていると思う人も多いだろう。なぜなら思考こそが問題を解決するために私たちが持つ唯一のものだと信じられてきたからである。それは私たちの伝統の一部なのだ」
- 「同様に、思考も一つのシステムである。そのシステムは思考や感情だけでなく、身体の状態も含み、さらに社会全体をも含んでいる。思考は人々の間を行き来し、古代から進化してきた過程においてそうなっているのだ」
- 「ここ数十年の間に、ラジオ、テレビ、航空機、そして人工衛星を備えた現代技術は、世界のあらゆる場所をほとんど瞬時に他のすべての場所と結びつける通信網を織り上げた」
- 「このように、新しい種類の理論が必要であることが分かる。その理論は、これらの基本的な前提を捨て、古い理論のいくつかの本質的特徴を、より深い現実から導かれた抽象的な形として回復するにとどまる。その現実においては、途切れることのない全体性が支配しているのだ」
- 「私の提案は、心の適切な働きには、その時々において一般に知られていることを全体的に把握することが必要だというものである。それは形式的な論理や数学的な言葉だけでなく、直感的に、イメージや感情、詩的な言語表現などにおいてもである」
- 「実際、断片が本当に分離しているという観念に従って生きようとすることこそが、本質的には、今日私たちが直面している極めて切迫した一連の危機を招いてきたのである」
- 「人々はもはや主として対立しているのではなく、また単に相互作用しているとも言えない。むしろ彼らは、絶えず発展し変化し得る共通の意味のプールに参加しているのである」
- 「個性は、全体性から展開するときにのみ可能である」
- 「ある意味で人間は宇宙の小宇宙である。したがって人間とは何であるかは、宇宙への手がかりとなる。私たちは宇宙の中に包み込まれているのだ」