「高層ビル群からパーラーバラードが流れてくるなんて想像できないだろう。ああいう音楽は、もっと時間の流れとは無縁な、生の在り方の中にあったものなんだ」

- 1941年5月24日~
- アメリカ合衆国出身
- シンガーソングライター、詩人、ノーベル文学賞受賞者
英文
“You can’t imagine parlor ballads drifting out of high-rise multi-towered buildings. That kind of music existed in a more timeless state of life.”
日本語訳
「高層ビル群からパーラーバラードが流れてくるなんて想像できないだろう。ああいう音楽は、もっと時間の流れとは無縁な、生の在り方の中にあったものなんだ」
解説
この言葉は、音楽と時代・空間との深いつながりを語ると同時に、現代社会の風景と古き音楽の精神との断絶を浮き彫りにした、ディラン特有の詩的な批評である。「パーラーバラード」とは19世紀から20世紀初頭にかけて家庭の応接間(パーラー)で歌われた叙情的な歌曲のことであり、それは人と人、時間と空間が密接に結びついた生活の中で生まれた音楽だった。
それに対し、「高層ビル群」は近代的で匿名的、そして効率化された現代都市の象徴である。そこに「漂う」ことが似合わない音楽の例としてバラードを挙げることで、ディランはある種の音楽や表現は、場所や生のリズムと切り離しては成立しないことを語っている。さらに「more timeless state of life(もっと時間から自由な生活の在り方)」という表現には、過去のゆったりとした、構造に縛られない人間的時間への郷愁と理想がにじんでいる。
現代において、音楽がデジタル配信され、場所や時間に無関係に消費されるようになった中で、この名言は音楽の本来の「居場所」や、表現が持つ時間的・空間的文脈の重要性を思い出させてくれる。ディランはこの一言で、音楽とは単なる音ではなく、その響きにふさわしい空気、時間、人間関係の中でこそ生きるものだという普遍的な真理を静かに語っている。
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