「私は政治的な歌なんて書いたことがない。歌で世界が救えるなんてことはないんだ。そんな考えは、もう通り過ぎてきたよ」

ボブ・ディランの名言・格言・警句
  • 1941年5月24日~
  • アメリカ合衆国出身
  • シンガーソングライター、詩人、ノーベル文学賞受賞者

英文

“I’ve never written a political song. Songs can’t save the world. I’ve gone through all that.”

日本語訳

「私は政治的な歌なんて書いたことがない。歌で世界が救えるなんてことはないんだ。そんな考えは、もう通り過ぎてきたよ」

解説

この言葉は、ディランが「プロテスト・ソングの旗手」や「世代の代弁者」として祭り上げられた過去に対して、距離を置く姿勢を明確に表した一言である。多くの人々が彼の初期の楽曲に政治的メッセージを見出し、それを社会運動の象徴としたが、ディラン自身はその役割を一貫して否定し、歌はあくまで個人的な表現であり、世界を変える手段ではないと考えていた

「I’ve gone through all that(そんなことはもう通り過ぎてきた)」という一節は、かつてはその可能性に夢を見た時期もあったが、現実に直面し、それを超えた場所に自分は今いるという成熟した立場を示している。彼の表現は、政治的メッセージよりも、内面の矛盾や孤独、真理の追求といった個の感情に深く根ざしており、そこにこそ彼の詩の強さがある

現代でも、音楽や芸術に「社会的な役割」や「変革の力」を期待する声は強いが、この名言は表現者が過度な使命を背負わされることへの警鐘でもある。ディランはこの言葉で、歌は世界を救わないが、個人の真実を映す鏡であり、それこそが芸術の誠実さなのだと静かに語っている。

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