「何かがうまくいかないからといって、耳を切り落としたりするようなタイプの人間じゃない」

ボブ・ディランの名言・格言・警句
  • 1941年5月24日~
  • アメリカ合衆国出身
  • シンガーソングライター、詩人、ノーベル文学賞受賞者

英文

“I’m not the kind of cat that’s going to cut off an ear if I can’t do something.”

日本語訳

「何かがうまくいかないからといって、耳を切り落としたりするようなタイプの人間じゃない」

解説

この言葉は、自己破壊的な芸術家像への距離感をユーモアを交えて表明したものである。「耳を切り落とす」という表現は、明らかに画家フィンセント・ファン・ゴッホを指す文化的な象徴であり、極端な苦悩や狂気と結びついた芸術的イメージを連想させる。ディランはそれを否定することで、芸術は苦しみや犠牲の果てにのみ生まれるものではないという立場をとっている

ディラン自身も創作上の苦悩を抱えていたことは想像に難くないが、それを悲劇的なパフォーマンスや自己破壊的行動に結びつけることには意味がないと考えていた。むしろ彼は、作品が内面的誠実さと社会的感受性から生まれるものであり、劇的な自己表現や苦悩の演出を必要としないとする立場を貫いた。この言葉は、そうした芸術に対する現実的かつ冷静な態度を象徴している。

現代においても、天才=狂気という古いステレオタイプは根強いが、この名言はそれに対する健全な懐疑と皮肉を投げかける本物の芸術とは、極端な行為ではなく、地に足のついた思考と表現から生まれるという信念がにじむ一言である。狂気や悲劇を装わずとも、深い芸術は生まれるのだというディランの芸術観が端的に表れている。

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