「この世界を支配しているのは民主主義じゃない、それを頭に叩き込むんだ。世界を動かしているのは暴力さ──でも、それは言わずにおいたほうがいいかもな」

- 1941年5月24日~
- アメリカ合衆国出身
- シンガーソングライター、詩人、ノーベル文学賞受賞者
英文
“Democracy don’t rule the world, You’d better get that in your head; This world is ruled by violence, But I guess that’s better left unsaid.”
日本語訳
「この世界を支配しているのは民主主義じゃない、それを頭に叩き込むんだ。世界を動かしているのは暴力さ──でも、それは言わずにおいたほうがいいかもな」
解説
この言葉は、現代社会の政治的建前とその背後にある現実との激しい乖離を暴露する、ディランらしい皮肉と詩的批判に満ちた一節である。表面的には「民主主義」が世界を動かしているかのように語られるが、ディランはそれを否定し、真に世界を支配しているのは暴力だと断言する。そしてその事実は、口にするにはあまりにも不都合で、危険ですらあるという、暗い諦念をにじませている。
この発言は、冷戦や戦争、政治的欺瞞が渦巻く20世紀後半の国際情勢を背景にしており、力による支配と、表向きの民主主義とのギャップに対する深い不信感を表している。ディランは一貫して、体制的な言説や権威的な言葉を疑い、暴力と権力が実際にどこにあるのかを詩的なレベルで問い続けてきた。この一言はその姿勢を象徴するものといえる。
現代においても、民主主義という言葉が都合よく使われ、実際には暴力や抑圧が世界の多くの場所で横行していることは否定できない。この名言は、社会や国家の「建前」に惑わされず、現実の構造を見抜く力と、その構造を語ることの危うさへの警戒心を呼び起こす。ディランは詩人として、語ってはならぬことにあえて触れながら、その沈黙の重ささえも詩にする覚悟を持っていた。その覚悟が、この鋭くも静かな告発に宿っている。
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