「ツアーに出るのは、まるで宙ぶらりんな状態にいるようなものだ。どこにも属さず、どこへも向かわない感覚なんだ」

ボブ・ディランの名言・格言・警句
  • 1941年5月24日~
  • アメリカ合衆国出身
  • シンガーソングライター、詩人、ノーベル文学賞受賞者

英文

“Being on tour is like being in limbo. It’s like going from nowhere to nowhere.”

日本語訳

「ツアーに出るのは、まるで宙ぶらりんな状態にいるようなものだ。どこにも属さず、どこへも向かわない感覚なんだ」

解説

この言葉は、移動と演奏を繰り返すツアー生活の空虚さと孤立感を、ディランが詩的に表現したものである。「limbo(リンボ)」は、天国にも地獄にも属さない曖昧な領域を指す宗教的な概念であり、ここでは自分の存在が定まらず、漂っているような状態を象徴している。「nowhere to nowhere(どこでもない場所から、どこでもない場所へ)」というフレーズも、明確な目的地も帰属先もなく、ただ移動し続ける感覚を強く印象づけている。

ディランは長年にわたって「終わりなきツアー(Never Ending Tour)」を続けてきたことで知られているが、この発言はツアー生活の華やかさの裏にある精神的な孤独や疲弊、場所との断絶を静かに告白するものである。ステージ上では観客に囲まれていても、その旅の本質は「どこにも属さず、常に通過していく存在」としての自分を感じさせるものであったのだろう。

現代においても、移動や変化の多い生活や職業に従事する人々が、居場所のなさや目的の見失いを感じることは少なくない。この名言は、物理的にはどこかへ向かっていても、心は常に「どこにもいない」という実存的な空白を見つめた、ディランらしい鋭く孤独な言葉である。表現者である前に一人の旅人として、彼が抱え続けた感覚がここに凝縮されている。

感想はコメント欄へ

この名言に触れて、あなたの感想や名言に関する話などを是非コメント欄に書いてみませんか?


申し込む
注目する
guest

0 Comments
最も古い
最新 高評価
インラインフィードバック
すべてのコメントを見る