「具体的で分かりやすくするなんて誰にでもできる。それはいつだって楽なやり方だった。あいまいで分かりにくくするのが特別に難しいわけじゃない。ただ――具体的で分かりやすくするべき“何か”なんて、もともと存在しないんだ」

ボブ・ディランの名言・格言・警句
  • 1941年5月24日~
  • アメリカ合衆国出身
  • シンガーソングライター、詩人、ノーベル文学賞受賞者

英文

“Anybody can be specific and obvious. That’s always been the easy way. It’s not that it’s so difficult to be unspecific and less obvious; it’s just that there’s nothing, absolutely nothing, to be specific and obvious about.”

日本語訳

「具体的で分かりやすくするなんて誰にでもできる。それはいつだって楽なやり方だった。あいまいで分かりにくくするのが特別に難しいわけじゃない。ただ――具体的で分かりやすくするべき“何か”なんて、もともと存在しないんだ」

解説

この言葉は、明快さや単純化が必ずしも優れた表現とは限らないという、ディランの詩的哲学を鋭く示したものである。一般的には、メッセージは「はっきり伝えるべき」「分かりやすいほうがよい」とされるが、ディランはそれに異を唱え、あいまいさや象徴性こそが真実の複雑さを表現できる手段であると語っている。

特に注目すべきは、最後の文にある「there’s nothing, absolutely nothing, to be specific and obvious about」という断言である。これは、現代社会の現実や真実があまりにも混沌としており、単純化や明示によって捉えられる対象がすでに存在しないという深い虚無と直観を表している。つまり、世界そのものが「あいまい」である以上、芸術や言葉もまた、あいまいであるしかないという認識が根底にある。

この名言は、現代においてもなお有効である。SNSやマスメディアが分かりやすさや断定性を優先しがちな時代において、この言葉は言葉の本質と、表現の自由さ・奥行きの重要性を思い出させてくれる明快であることが真実とは限らない、むしろ曖昧さの中にしか見えないものがある──その詩人としての確信が、この一言に凝縮されている

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