「私たちは安心を好む。だからこそ、信仰においては教皇が無謬であり、道徳においては高名な学者たちが絶対に正しいと思いたがる。それによって私たちは安心するのだ」

- 1623年6月19日~1662年8月19日
- フランス出身
- 哲学者、数学者、物理学者、キリスト教神学者
英文
“We like security: we like the pope to be infallible in matters of faith, and grave doctors to be so in moral questions so that we can feel reassured.”
日本語訳
「私たちは安心を好む。だからこそ、信仰においては教皇が無謬であり、道徳においては高名な学者たちが絶対に正しいと思いたがる。それによって私たちは安心するのだ」
解説
この言葉は、人間が不確実さを嫌い、権威に安住しようとする心理的傾向を鋭く突いている。パスカルは、信仰や倫理といった本来は内面的で深い問いに対して、人々が自ら考えるのではなく、絶対的な権威を設けて安心を得ようとする姿勢を批判している。教皇の無謬性や道徳的権威の絶対性を求めるのは、真理への希求というより、迷わずに済むという「安心」への欲求なのである。
これは、彼の信仰の個人的・内面的性格を重視する立場と対立する考え方である。パスカルにとって、真の信仰や道徳的成長とは、自らの不安や矛盾に向き合い、理性と心の両方を用いて模索することであった。ゆえに、外部の権威に盲目的に従う姿勢は、精神的成熟を妨げる自己欺瞞と見なされたのである。
現代においても、宗教的、政治的、あるいは医療や科学においてさえ、「この人が言うのだから正しい」と思考停止することの危険は常に存在する。この名言は、権威に頼ることで得る安心が、しばしば思考の放棄につながるという普遍的な警告であり、信仰や倫理における本質的な自由と責任を改めて問いかけるものである。
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