「私たちの思考をよく観察すれば、それが常に過去と未来に囚われていることが分かるだろう」

- 1623年6月19日~1662年8月19日
- フランス出身
- 哲学者、数学者、物理学者、キリスト教神学者
英文
“If we examine our thoughts, we shall find them always occupied with the past and the future.”
日本語訳
「私たちの思考をよく観察すれば、それが常に過去と未来に囚われていることが分かるだろう」
解説
この言葉は、パスカルが人間の意識の構造と不安の根源について深く洞察していたことを示している。彼は、人間が「現在」という瞬間に心を留めることがほとんどできず、過ぎ去った過去の後悔や、まだ訪れていない未来への期待や不安に思考が引き裂かれていると見抜いていた。つまり、人間の心は現在から逃れ続けることで、真の安らぎを失っているという指摘である。
この思想は、彼の「気晴らし(divertissement)」という概念と深く関係している。パスカルにとって、人間が現在に満足できず、常にどこか別の時点に心を移そうとする姿勢そのものが、不幸の原因である。現在を直視せず、「いつか幸せになる」「かつて幸せだった」と考えることで、本当の幸福から遠ざかってしまうのである。
現代においても、過去のトラウマや未来の不安に囚われて「今ここ」に集中できないという悩みは広く共有されている。この名言は、人間の思考が時間に支配される性質を認めたうえで、現在に目を向けることの難しさと重要性を突きつける。パスカルはここで、本当の平安や真理は、過去や未来ではなく、唯一現前する「今」においてしか見出せないという実存的な課題を私たちに示している。
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